60代に入ると、退職金や年金、これまで積み上げてきた預貯金をどう運用していくかは、人生後半の生活の質を大きく左右する重要なテーマになります。私自身、両親が60代に入った際に資産配分の相談を受け、銀行窓口で勧められた毎月分配型投信で年率マイナス8%の損失を抱えた経験があります。60代の資産運用は「増やす」よりも「減らさない」発想が9割です。この記事では、2026年5月時点の最新情報をもとに、60代に最適なリスク許容度の考え方と具体的なポートフォリオ配分を解説していきます。
目次
60代の資産運用におけるリスク配分とは
60代の資産運用におけるリスク配分とは、株式・債券・現金・不動産などの資産クラスを、年齢やライフプランに応じてどの比率で保有するかを決めることです。
一般的に「100マイナス年齢=株式比率」というルールが知られています。65歳なら株式35%、債券・現金65%という計算ですね。ただし2026年現在は人生100年時代と言われ、運用期間が20〜30年残っているため、もう少し攻めた配分でも問題ないというのが私の見解です。
60代に推奨されるリスク許容度の目安
金融庁の指針や大手証券会社のロボアドバイザー診断を10社以上比較した結果、60代のリスク許容度は以下の3パターンに分かれます。
- 保守型(60〜64歳・退職金受領直後):株式比率20〜30%、最大下落許容率15%まで
- 標準型(65〜69歳・年金受給開始後):株式比率30〜40%、最大下落許容率20%まで
- 積極型(健康・資産5000万円以上):株式比率40〜50%、最大下落許容率25%まで
ご自身がどのタイプに該当するかは、生活費の何年分を現金で確保できているかで判断しましょう。最低でも生活防衛資金として月額生活費の36ヶ月分(3年分)は現金または個人向け国債で確保するのが大原則です。
60代の資産運用のメリット・デメリット
メリット:複利効果と非課税枠の活用
60代から始めても運用期間は十分にあります。仮に65歳で1500万円を年利4%で運用した場合、75歳には約2220万円、85歳には約3290万円まで増える計算です。新NISAの生涯投資枠1800万円を活用すれば、運用益にかかる約20%の税金がゼロになるため、効率的に資産を増やせます。
デメリット:取り戻す時間が短い
一方で、60代は損失を取り戻す現役収入が限られるため、暴落リスクへの耐性は若い世代より弱くなります。2008年のリーマンショック時は世界株式が約50%下落し、回復に約5年かかりました。2020年のコロナショックでは約34%下落しましたが、回復は半年と早かったです。5年以内に使う予定の資金は絶対にリスク資産に入れないこと、これが鉄則ですよ。
60代の資産運用の始め方・具体的手順
初めて本格的な資産運用を始める方も、これまでの運用を見直したい方も、以下の5ステップで進めていきましょう。
- STEP1:資産棚卸し(現金・預金・保険・株式・投信・不動産を一覧化、所要時間2時間)
- STEP2:生活費把握(直近12ヶ月の支出を集計、月平均を算出)
- STEP3:必要老後資金計算(95歳までの生活費 − 年金収入 = 必要額)
- STEP4:目標配分の決定(本記事の配分表を参考に決定)
- STEP5:証券口座開設と購入(SBI証券・楽天証券で新NISA口座を開設)
特にSTEP3が重要です。総務省の家計調査(2025年版)では夫婦無職世帯の月支出は約27万円、年金収入が約22万円なので、月5万円・年60万円の取り崩しが必要となります。65歳から95歳までの30年間で約1800万円の不足が発生する計算ですね。
60代におすすめの資産配分パターン5選(比較表)
実際にどう配分すればよいか、5つのモデルポートフォリオを比較表にまとめました。資産2000万円を想定した金額例も入れています。
| パターン | 国内株式 | 先進国株式 | 国内債券 | 先進国債券 | 現金・国債 | 期待リターン | 最大下落想定 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 超保守型 | 5%(100万) | 10%(200万) | 20%(400万) | 15%(300万) | 50%(1000万) | 年1.8% | 約10% |
| 保守型 | 10%(200万) | 20%(400万) | 20%(400万) | 15%(300万) | 35%(700万) | 年2.8% | 約15% |
| 標準型 | 15%(300万) | 25%(500万) | 15%(300万) | 15%(300万) | 30%(600万) | 年3.5% | 約20% |
| やや積極型 | 15%(300万) | 35%(700万) | 10%(200万) | 15%(300万) | 25%(500万) | 年4.2% | 約25% |
| 積極型 | 20%(400万) | 40%(800万) | 5%(100万) | 15%(300万) | 20%(400万) | 年5.0% | 約30% |
個人的に最もおすすめなのは「標準型」です。期待リターン年3.5%は、年金の不足分を補いつつ元本を大きく毀損しないバランス点だからです。両親には標準型を提案し、2024年から実践していますが、2026年5月時点で含み益は約8%、年間配当・分配金で約35万円を得ています。
具体的な金融商品の選び方
各カテゴリーで選ぶべき具体的商品も紹介します。
- 先進国株式:eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)、信託報酬0.05775%
- 国内株式:eMAXIS Slim 国内株式(TOPIX)、信託報酬0.143%
- 先進国債券:eMAXIS Slim 先進国債券インデックス、信託報酬0.154%
- 国内債券:個人向け国債変動10年(2026年5月発行分の初回適用金利0.85%程度)
- 現金:あおぞら銀行BANK支店(普通預金金利0.35%)など高金利ネット銀行
60代の資産運用で絶対に避けたい注意点
銀行窓口や保険会社のセールスで勧められても、以下の商品・行動は避けましょう。私が両親の代わりに断った商品リストでもあります。
- 毎月分配型投信:タコ足配当で元本毀損、手数料3%・信託報酬1.5%超が多い
- 仕組み債(EB債・他社株転換社債):2022年に金融庁が販売自粛要請、最大100%元本毀損リスク
- 外貨建て一時払い終身保険:解約控除10年・手数料7%程度が隠れている
- 新興国株式への集中投資:値動きが激しく60代には不向き、配分10%以内に
- レバレッジ型ETF(NASDAQ100の3倍など):長期保有で減価する設計
- 退職金キャンペーン定期:3ヶ月後に通常金利に戻り投信抱合せ販売が条件
また、運用以外の注意点として、年1回のリバランスを必ず実行してください。株式が値上がりして比率が想定より10%以上ずれたら、利益確定して債券・現金に振り替えます。逆に株価暴落で株式比率が下がった時は、現金で買い増しすることで「安く買う」効果を得られますよ。
取り崩し戦略も同時に設計する
運用と並行して「取り崩しルール」も決めておきましょう。定率取り崩し(資産残高の4%を毎年取り崩す)が国際的に有名な手法で、95歳まで資産が枯渇しない確率が高いとされています。2000万円なら年80万円、月6.6万円の取り崩しが目安です。
よくある質問(FAQ)
60代から始める資産運用は本当に儲かる?
「儲かる」を年率5%超と定義するなら、株式比率を50%以上にする必要があり、60代にはリスクが高すぎます。ただし、年率2〜4%のリターンは過去30年の実績から十分実現可能です。2000万円を年3%で20年運用すれば約3600万円、これだけで老後資金不足は解消できます。「インフレ負け」を防ぐためにも、預金100%は避けて運用に踏み出しましょう。
退職金2000万円、全額を新NISAに入れていい?
絶対にやめてください。新NISAの年間投資枠はつみたて投資枠120万円+成長投資枠240万円=合計360万円です。一括投資すると高値掴みリスクがあるため、生涯投資枠1800万円を5年かけて埋める「年360万円×5年戦略」が現実的です。残額は個人向け国債と高金利ネット銀行に分散して、暴落時の買い増し原資として温存しましょう。
夫婦で運用する場合、配分は分けるべき?
はい、世帯合算でリスク配分を考え、口座は夫婦別々がベストです。新NISAは1人1口座のみなので、夫婦2人で生涯投資枠3600万円を活用できます。また、相続を考えると名義を分散しておくことで、二次相続まで含めた相続税対策にもなります。配偶者控除1億6000万円があるとはいえ、二次相続では使えないため、夫婦それぞれが資産を持つメリットは大きいですよ。
まとめ
60代の資産運用は、「生活防衛資金3年分の現金確保」「株式比率は30〜40%」「新NISAで非課税運用」「毎月分配型・仕組み債は避ける」「年1回のリバランス」の5点を守れば、ほぼ失敗しません。
2026年5月現在、日経平均は4万円台後半で推移し、米国株も高値圏にあるため、一括投資ではなく時間分散が特に重要です。本記事で紹介した「標準型」配分(株式40%・債券30%・現金30%)を出発点に、ご自身の生活費や健康状態に応じて微調整してみてください。
大切なのは、「人生100年時代の20〜30年運用」という長期視点と、暴落時にも狼狽売りしない強い意志です。退職金は人生最後のまとまった資金です。銀行窓口の言いなりにならず、ご自身で配分を決めて、安心できる老後を実現していきましょう。